大判例

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宮崎地方裁判所 平成10年(わ)37号

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官馬場浩一出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社中村養鰻場を罰金二〇〇〇万円に、被告人中村宗生を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人中村宗生に対し、この裁判確定の日から三年間その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社中村養鰻場(以下、「被告会社」という。)は、宮崎県児湯郡新富大字新田一五五二五番地に本店を置き、鰻の養殖販売業等を営む資本金五〇〇万円の有限会社であり、被告人中村宗生(以下、「被告人」という。)は、被告会社の代表取締役としてその業務全般を統括していた者であるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て

第一  平成五年一〇月一日から平成六年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が六一七二万九七〇五円(別紙1-1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、売上を除外する方法により、所得の一部を秘匿した上、同年一一月三〇日、同郡高鍋町大字上江一二〇七番地の五所在の所轄高鍋税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額がなくこれに対する法人税がない旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の同事業年度における正規の法人税額二二三一万八四〇〇円(別紙2-1のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成六年一〇月一日から平成七年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が七五七一万八〇九〇円(別紙1-2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、前同様の行為により、同年一一月三〇日、前記高鍋税務署において、同税務署長に対し、同事業年度の所得金額が三八七万八七六七円で、これに対する法人税額が八八万三五〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の同事業年度の正規の法人税額二七五九万七一〇〇円と右申告税額との差額二六七一万三六〇〇円(別紙2-2のほ脱税額計算書参照)を免れ

第三  平成七年一〇月一日から平成八年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際の所得金額が七六〇八万一七一〇円(別紙1-3の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、前同様の行為により、同年一二月二日、前記高鍋税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五一二万九五一〇円で、これに対する法人税額が一四〇万八七〇〇円である旨の内容虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま法定の納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、被告会社の同事業年度により正規の法人税額二七七四万三〇〇〇円と申告税額との差額二六三三万四三〇〇円(別紙2-3のほ脱税額計算書参照)を免れたものである。

(証拠の標目)

判示事実全部について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書二通

一  原田穂積(六通)、原田美千子(三通)及び中村直美の検察官に対する各供述調書

一  大森仁史の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  検察事務官作成の報告書

一  大蔵事務官作成の調査書四通

一  大蔵事務官作成の査察官報告書

一  大蔵事務官作成の平成九年四月二四日付領置てん末書

一  法人の登記簿謄本

判示第一、第二の事実について

一  深江正也及び田中啓基の検察官に対する各供述調書

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、法人税法一五九条一項に該当するが、いずれも所定刑中懲役刑を選択し、以上は平成七年法律第九一号(刑法の一部を改正する法律)附則二条二項前段により、同法による改正後の刑法(以下「新法」という。)四五条前段の併合罪であるから、新法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第二の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役一年に処し、前記附則二条三項により、情状により新法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

被告人の判示各所為は被告会社の業務に関してなされたものであるから、被告会社については、判示各所為につき、法人税法一六四条一項により同法一五九条一項所定の罰金刑に処すべきところ、情状により同条二項を適用して、罰金額をその免れた法人税の額以下とし、以上は前記附則二条二項前段により、新法四五条前段の併合罪なので、新法四八条二項により各罪の罰金額を合算し、その金額の範囲内で被告会社を罰金二〇〇〇万円に処することとする。

(量刑の事情)

本件事案は、鰻の養殖販売業等を行なっている被告会社を統括する被告人が、平成六年九月期から平成八年九月期までの三期にわたって、売上の一部を除外する方法により被告会社の所得の一部を秘匿して申告し、正規の法人税額の納付を免れたという事案であるが、三年分のほ脱額が合計で七五三六万六三〇〇円と高く、そのほ脱率も三期平均して九七・〇パーセントと極めて高率であり、悪質な犯行と言わざる得ない。

被告人は、本件犯行の動機として、養鰻場というものは、シラス鰻の仕入値が不安定な上、鰻が病気等で全滅したり、成鰻価格が下落するなどして非常な不安定な事業であることから、いつでも不測の事態に対応できる万全な経営基盤を築くために少しでも運転資金を蓄えておきたかったことや老後の蓄え、独身で病気持ちの長女の将来の生活資金を蓄えておきたいということにある旨述べるが、不測の事態に対する運転資金の内部留保については通常の営業努力の範囲内においてなすべきことであり、決して被告人にとって斟酌すべき有利な事情とはならないし、また、老後や長女の将来の生活資金の蓄えについても脱税を正当化するものではなく、動機において特に酌量すべきとも思われない。

しかしながら、被告人は本件各犯行を認めていること、査察が入った当初は被告人はすべてを明らかにしないという態度をとっていたが、その後の早い時期から積極的に捜査に協力する等反省の態度を示していること、被告会社はすでに修正申告を済ませ、本税延滞税重加算税等約一億七〇〇〇万円を納めていること、本件を契機に以前は申告の時だけ税理士に頼んでいたが、本件後は税理士を変え、全面的に経理をみてもらう等経理体制を改善したこと、被告人の妻が当公判廷において今後は本件のようなことには協力しない旨述べていること、被告人にはこれまで前科前歴がないこと、被告人には同居の家族として妻と娘がおり、娘は病気を患っていること等を被告人に有利な事情として考慮して、被告人に対しては主文の刑に処するがその刑の執行を猶予することとし、また、被告会社については主文の刑が相当であると思料する。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 松下潔 裁判官 小池晴彦 裁判官 前田郁勝)

別紙1-1

修正損益計算書

自 平成5年10月1日

至 平成6年9月30日

有限会社中村養鰻場

<省略>

別紙1-2

修正損益計算書

自 平成6年10月1日

至 平成7年9月30日

有限会社中村養鰻場

<省略>

別紙1-3

修正損益計算書

自 平成7年10月1日

至 平成8年9月30日

有限会社中村養鰻場

<省略>

別紙2-1

ほ脱税額計算書

自 平成5年10月1日

至 平成6年9月30日

有限会社中村養鰻場

<省略>

別紙2-2

ほ脱税額計算書

自 平成6年10月1日

至 平成7年9月30日

有限会社中村養鰻場

<省略>

別紙2-3

ほ脱税額計算書

自 平成7年10月1日

至 平成8年9月30日

有限会社中村養鰻場

<省略>

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